週末

Bunkamuraにキェシロフスキ監督作品『トリコロール/青の愛』を観に行く。半年前にユーロスペースで彼の特集上映を観て以来のファンなので、まさか年に二度もスクリーンで観る機会があるとはと楽しみにしながら渋谷へ。


感想としては、期待をしすぎたせいか少し肩すかしを食らった感じ。以前観た『白の愛』の方が単純に話の筋が若干サスペンスチックだったので楽しめた。


けれども、監督が丁寧に丁寧に撮ろうとしている思いはヒシヒシと伝わってきた。


一番すごいなーと思ったのは、時間の推移をサラッと描いたシーン。

中盤で家族を失った主人公は失意の中、見知らぬ街へと移り住む。アパートへの引っ越しが終わると、次のシーンでは主人公が喫茶店のボーイに「いつもの」と注文をする。


これだけで、新たな町に移ってきた彼女にも馴染みの喫茶店ができ注文を頼める程度には時間が経過し、さらに今まで劇中を覆っていた薄暗い雰囲気でなく明るい店内や外の風景を映し出すことで、(少なくとも表面的には)心の傷も癒えたのではないかと感じ取ることができる。



例えばここで、新たにできた知り合いや親戚への手紙なんかを登場させて「もうこっちに来て大分経つけど慣れた?」なんて、いかにも説明乙な陳腐なセリフを間に挟んでしまうとそれだけでテンポが落ちて締まりが無くなる。

こういう風に無駄を削ぎ落として、最低限のことだけで心情を説明してしまうあたりがいい作品だと思う所以なのだろうな。