そんでもって

北野武監督作品Brotherも昨日観た。彼の映画の中では決して最高ではないが、それなりに面白い。

まずはじめに言っておくと、この映画はすべてが噛み合っていない。久石譲の音楽は叙情的すぎて大袈裟だし、舞台がアメリカなのでどうしても大味になってしまうのにそこに従来の緊迫感をまぜようとするからチグハグになる。


マフィアの幹部たちとホテルの一室で交渉するシーン。外人がずらっと並んで座っているのをカメラがゆっくりとパンしながら撮るんだけど、あまりの大仰さに、おいおいハリウッドのワンシーンかよと滑稽でしかたなくてそれだけで笑えてくる。


そう、Brotherの重要なポイントはこの「笑える」というところだと思う。アメリカに日本のヤクザ社会の習慣を無理やり持ち込み、北野武が「かっこいい」と思うやくざスタイルをシリアスに垂れ流す。そのチグハグさに笑いがこみあげる。実際自分は事あるごとに笑いっぱなしだった。しかも、結構それぞれのシーンがかっこ良かったりするのだからまたニクい。


先のホテルのシーンでは、テーブルの下に張り付けて隠しておいた銃(都合良すぎ!!ww)を乱射して幹部を皆殺しにした後、かの有名な「Fukin' JAPくらいわかるよバカヤロー」というセリフを吐き捨てる。これが意外や意外、格好良い。これはもう完全に武の存在感ありきのシーンだ。


この映画で彼は、過去の自分のスタイルをなぞっているに過ぎない。目新しいシーンは特にない。

それでも彼は立っているだけで格好良い。Brotherと銘うって絆の強さをテーマにしているもののメロドラマ要素を押し出し過ぎないのも功を奏していると思う。生き疲れたヤクザが死に場所を求めるというプロットもソナチネを踏襲している。そこら辺も自分の好みである要因だ。


武は不敵に笑いながら敵の頭を一発で仕留める。理屈はいらない。それさえあれば北野映画は成り立ってしまうという『様式美』を、良くも悪くも再認識させた一本だった。