吉田秋生について

文京区の図書館で漫画を借りられると知ってから、いそいそと予約をしては家で楽しみに読んでいる。

特に去年暮れあたりに出会った「吉田秋生」には心酔しきっていると言ってもいいくらいで、今日にわかに全作品集めようと思いついて早速三冊購入。

夢みる頃をすぎても (小学館文庫)

夢みる頃をすぎても (小学館文庫)

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス)

海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス)


これまで少女マンガに触れる機会はほとんど無く、ようやく池田理代子だとか萩尾望都を読み始めたのだけどやはりしっくりこない部分があるわけです。いくら話が面白かったり、文学性や重厚感を押し出していっても根本的な所では女性的な視点に帰着してしまう。それは作者が女性である以上しょうがないし、むしろだからこその「少女」漫画なわけで。いくらその作品が面白いと言っても、自分が男性である以上は女性よりも少女マンガを楽しめるとは思えないし、やっぱり楽しみ方に限界を感じてしまう。


それに比べて、吉田秋生はすんなりと少年誌(もしくは青年誌)と少女のそれの橋渡しをしてくれる稀有な作家だと思う。


Banana fish (1) (小学館文庫)

Banana fish (1) (小学館文庫)

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)


最初に彼女を知った「BANANA FISH」は、謎のドラッグをめぐって繰り広げられるニューヨークのマフィアとストリートキッズの抗争の話だし、「河よりも長くゆるやかに」に至っては男子校が舞台の男子高校生の悶々とした青春の話(しかも3分の1は占めているのではなかろうかというオナニーネタの雨あられ・・・)。


つまり、ネタは圧倒的に男性向けのそれ。女性作家なのに何でこんなこと書けるの?と不思議でならない。普段ジャンプやらのドタバタに慣れ親しんだ自分はすっと入っていけて、まずは女性作家に対して自分が持っている第一のハードルをあっさり突破してしまう。



それだけにとどまらない彼女の魅力は、登場人物の心の動きの繊細さ。時折見え隠れする、彼らの背負っている業の深さ。この辺が『少女』漫画家、吉田秋生の真骨頂ではないでしょうか。


大なり小なりみんな何かしら辛いことはあるんだよ、でもそれを飲み込んで生きていかなきゃいけないじゃん。



健気な主人公たちにそんなメッセージをさらりと言われているようで、本当に何度も読み返したくなる。


男性の『無骨さ』と女性の『繊細さ』、ステレオタイプで大雑把な分け方だけれどそんな両極端のイメージを兼ね揃えている素晴らしい人だと思う。